ポォーン、と場違いに明るい音が、エレベーターの到着を知らせた。松波は顔色を無くした日崎の肩を強く叩いた。
「そう心配するな、怪我は大したことないらしいから。とにかく、俺は事故現場に行くから、事務所の方頼んだぞ」
言いながら、彼は訝しげに眉を顰めた。まじまじと日崎を見つめる。
「日崎、お前……?」
閉まりかけたエレベーターの扉を手で押さえ、松波は大股に乗り込んだ。日崎の肩をぐいと引いて、強引に連れ込む。
「お前も来い。榊、留守頼むぞ」
はい、という榊の緊張した声を合図に、エレベーターの扉は閉まった。