闇が深くなるなか、チャペル前の庭に淡い光が灯った。キャンドルの揺れる炎が道を示す。その先に、純白のドレスを纏った合田美弥と、彼女の手をとる井上達也の姿が現れた。
チャペル入り口に並んでいた参列者から、わあ、と歓声と拍手が上がった。美しく響くピアノの音に促されるように、新郎新婦はゆっくりと光の道を進んだ。幻想的な光景だった。
「綺麗……」
日崎の耳に、沢渡のつぶやきが届いた。日崎は拍手を続けたまま、さりげなく隣に佇む彼女を見た。沢渡はうっとりと目を細めて、両手を合わせて口元に持っていき、祈るように二人を見つめていた。その瞳はわずかに潤んでいる。
「神聖な感じがするな」
日崎が話し掛けると、彼女は素直に頷いた。
「うん。なんだか、こっちの気持ちまで綺麗になりそう」
目の前を通り過ぎる二人に、一際高く祝福の拍手が送られる。
日崎には、まっすぐに前を向いて歩く井上の横顔が別人のように見えた。共に生きていく人を見つけ、愛し愛されて、これからの人生を支えあい生きていく。そうして誇らしく前に進む友人を、少しだけ羨ましく思った。