委員長に早退する旨を告げ、北沢は鞄を掴み、マフラーとコートを左腕に引っ掛けたまま階段を二段とばしで下りていった。正門を出ながらコートを羽織り、まだちらちらと舞う粉雪を見上げた。灰色の空に、吐く息は白く流れる。いつか見た空と似ていた。
最近はいつも数人で話しながら帰っていたので、一人きりで門を潜るのは久しぶりだった。
(隣に空がいないだけで、こんなに静かなのか)
北沢はぎゅっと唇を結び、鞄を持ち直して軽く足を踏み出した。空が学校を出てから、そんなに時間は経っていない。すぐに追いつける。
(もう待たない。こんな寒空の下、一人では泣かせない。もし泣いていたとしても ―――すぐに抱きしめてやるから)
学校から続く坂道に、北沢の革靴の音と昼休み終了のチャイムが響いた。